はじめに ― なぜこの記事を書くのか

Diary.は東京・杉並を拠点に、賃貸管理からリフォーム・壳貸まで一気通貫で手がけている不動産会社です。「管理だけの会社」でも「施工だけの会社」でもなく、両方できるのが私たちの強みだと思っています。

そんな私たちに、ある日大手ハウスメーカーから声がかかりました。東証プライム上場のAQ Group(アキュラホーム様)です。「新築の1階に入る美容室の内装工事をお願いできないか」と。

建築の案件なのに、不動産会社に声がかかる。これはかなり稀なケースだと思います。通常、建築の仕事は建築会社同士のネットワークで回るものです。でも今回は、住宅に特化したアキュラホーム様にとって店舗の内装が専門外だったこと、そして私たちDiary.にはグループ会社で美容室を経営していた実績があったことが決め手になりました。しかもその美容室は自社施工・自社運営。美容室の内装を自分たちでつくり、実際に経営もしていたという経験が、このお話につながったのです。

この記事では、その経緯と実際の仕事の中身をお伝えしたいと思います。

どんなプロジェクトだったのか

案件の概要はこんな内容でした。

プロジェクト概要

場所 神奈川県川崎市高津区
建物 新築3階建て(アキュラホーム「超空間の家 Neo」)
構造 木造3階建て
用途 1階:美容室(店舗)、2〜3階:住居
敷地面積 約52㎡(コンパクトな都市型住宅)
延床面積 約109㎡(3フロア合計)
Diary.の担当 1階美容室(店舗部分)の内装施工

注目すべきは、1階が美容室という点です。アキュラホーム様は住宅に特化したハウスメーカーのため、2階・3階の住居部分はアキュラホーム様が施工し、1階の美容室(店舗)部分を私たちDiary.が担当するという役割分担でした。店舗の内装は住宅とは求められる設備基準がまったく違うため、専門的な知識と経験が必要になります。

Diary.に声がかかった経緯

きっかけは、知り合いの建築会社からの紹介でした。アキュラホーム様が川崎市で新築3階建ての店舗併用住宅を建築中で、1階に入る美容室の内装施工を任せられるパートナーを探しているとのこと。

アキュラホーム様は住宅の設計・施工に特化したハウスメーカーです。住宅の施工品質には定評がありますが、店舗の内装は専門外。住宅と店舗では、求められる法規制も設備基準も施工ノウハウも大きく異なるため、店舗施工の経験を持つ会社が必要だったのです。

そこで白羽の矢が立ったのが私たちでした。Diary.はグループ会社で美容室を経営しており、その美容室の内装も自社で施工しています。つまり、美容室の設計・施工から開業・運営まで一連の流れを自社グループで経験済み。「美容室のことをわかっている施工会社」として、建築会社を通じてアキュラホーム様にご紹介いただき、設計チームとの打合せからスタートしました。

案件から始まり、正式パートナーへ

最初は1件の美容室案件としてお話をいただきましたが、打合せを重ねる中でアキュラホーム様から「AQ匠会」への加入を打診していただきました。

AQ匠会とは?

AQ Group(アキュラホーム様)が運営する協力業者ネットワーク。安全・品質・技術の向上、顧审満足度の向上、適切な現場環境の確保を目的としています。加入にあたっては、協力業者取引申請書をはじめ、各種覚書、保陪加入証明、資格証明など多数の書類提出が求められます。

匠会への加入手続きは想像以上に本格的でした。提出書詞は16種類にのぼり、個人情報の取扱いに関する親書、反社会的勢力排除に関する親書、電子発注連携の申請など、大手ならではのコンプライアンス体制に対応する必要がありました。

さらに、電子契約システム(GMOサイン)、電子受発注システム(注文分譲クラウド)、工程管理システム(現場plus)への登録も行い、デジタル化された業務フローにも対応。こうして、1件の案件をきっかけに正式な協力業者パートナーとなったのです。

案件受注からパートナー加入までの流れ

求められたオーダーの中身

私たちが担当したのは、1階の美容室の内装施工です。2階・3階の住居部分はアキュラホーム様の施工範囲で、私たちは店舗部分に集中して取り組みました。

美容室としての基準をクリアする

1階はオーナー様の奥様が営む美容室になる予定でした。住宅の一部を店舗として使う場合、通常の住宅工事とは異なる対応が必要です。

まず、川崎市の美容所開設基準への適合が求められます。美容所は13.2㎡以上の面積が必要で、床や腰板には不浸透性の材料を使わなければなりません。流水式の洗い場(シャンプー台)の設置、消毒設備の確保、100ルクス以上の照明、十分な換気設備なども義務づけられています。

設備の選定と施術動線の設計

設備面では、クリナップのコンパクトキッチン「colts」(幅1200mm)を設置。シャンプー台は高さ1400mm、背面設置の仕様で、限られたスペースの中で施衇動線と顧客動線を両立させる配置を検討しました。

照明については、当初ダウンライトの予定でしたが。美容室の作業性を考慮してシーリングライトに変更。こうした現場での判断は、店舗施工の経験があるからこそできるものです。

電気設備と開業届のサポート

美容室は業務用と住居用で電気系統を分離する必要がありました。電気設備配置図に基づき、営業に必要な容量の確保と安全性の両立を図っています。開業届の手続きに必要な電気関係の書詞作成もサポートしました。

打合せで大切にしたこと

大手ハウスメーカーとの仕事で特に気を配ったのは、「確認の精度」です。

2024年1月の現場打合せでは、アキュラホーム様の設計担当、設備担当と一緒に細かい仕様を一つひとつ詰めていきました。ガス絥湯器の配置、壁の高さ(H900mm)、室内窓(デコマド)の有無、カーペットの仕様確認など。ひとつでも認識がズレると手戻りになるので、議事録を作成し、次回打合せで必ず再確認するフローを徹底しました。

大手の現場は「なんとなく」が通用しません。仕様書どおりの施工はもちろん、変更が入った場合の記録と共有、品質チェックの基準など、すべてにおいて高い精度が求められます。これは大変でもありましたが、私たち自身の成長にもつながりました。

美容室開業に必要な行政手続き

美容所を開設するには、管轄の区役所衛生課への事前相談から始まり、開設届の提出、施設の検査、適合確認済書の交付という流れがあります。開設届には平面図や医カの診断書なども必要で、手数料は16,000円。開設予定日の10日以上前に届出が必要です。消防法令や建築基準法への適合確認も並行して進めなければなりません。

この経験から得たもの

アキュラホーム様との協業を通じて、私たちは大きく3つのものを得ました。

1. 大手品質基準への対応力

大手ハウスメーカーの現場は、安全管理・品質管理・工程管理のすべてにおいて高い基準が設けられています。AQ匠会の一員として施工に参加したことで、自社の管理体制を一段引き上げることができました。

2. 店舗併用住宅のノウハウ

住宅と店舗が一体になった建物は、法規制の理解から設備計画、行政手続きまで幅広い知識が必要です。今回の美容室案件を通じて、飲食店やサロンなど他の業種にも応用できる実務経験を積むことができました。

3. 信頼の証としての実績

東証プライム上場企業から直接工事を任されたという事実は、私たちの施工力を客観的に証明してくれるものです。この実縎は、今後オーナー様への提案や新規のお取引においても大きな信頼材料になると考えています。

まとめ ― 「管理も施工もできる」ということ

Diary.は不動産管理会社ですが、リフォーム・リノベーションの施工も自社で行っています。今回のアキュラホーム様との協業は、その施工力が大手にも認められた一つの証です。建築の案件で不動産会社に声がかかるというのは異例のことですが、だからこそ「管理も施工もできるDiary.」の存在価値をお伝えできる事例だと考えています。

「管理会社が施工もやって、本当に大丈夫なの?」と思われるかもしれません。でも逆に言えば、物件の状態を日々見ている管理会社だからこそ、最適なリフォーム提案ができるのです。入居者のニーズも、建物のクセも、相場感もわかった上で「ここにお金をかけましょう」「ここは様子を見ましょう」と判断できる。それが、管理と施工を一社で担うことの本当の価値だと私たちは考えています。

店舗併用住宅の内装工事や美容室の開業支援、大手ハウスメーカーとの協業実績に興味がある方は、お気軽にお問い合わせください。